旅する小鉢

我が家のご飯の記録と、ご飯を通して考えたこと。

2021年お正月 おせちと雑煮

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悩んだ末にこの年末年始は帰省しないことに決めた。結婚してから、実家の正月が恋しくてたまらなかったので、実家の正月を再現できるのはもう今回くらいしかないと思っておせちと雑煮を作ることにした。それと同時に、逆に今まで経験したことがない正月にしてみたいという気持ちもあり、私にとっては懐かしさと新鮮さの混じった不思議な正月だった。

 

買い物リストと雑感

7キロある次女を抱っこしながら買い出しに行くと肩が壊れると思ったので、近所のスーパーと生協の宅配を駆使して少しずつ準備。こっちで迎える正月は初めてだったので、地元にはあるものが無かったり、その逆もあったりと面白い経験だった。以下、いつかの備忘録に、買い物リストと感じたこといろいろ。最初に夫にリストを見せたとき、こぢんまりといいつつ結構な量だね、というようなことを言われたが、今回きりかもしれないと思うとなかなかリストを削れなかった。

 

年越しそば

・そば
・にしん甘露煮もしくはえび天:実家ではいつも大晦日だけにしんそばだった。希望者はえび天。私はにしんが好きだった。
・かまぼこ
三つ葉
・柚子:今年は自宅に植えてあるので買う必要なし


雑煮

・もち:実家では丸餅で、丸くないとなんだか気持ち悪いのだが、今回は自宅ならではのことを、と思って、いつもお米を頼んでいる秋山農場さんの切り餅をいただく。
・雑煮大根:地元では普通のスーパーで売っているのに、こっちではスーパーと八百屋を6軒回っても無かった。夫には「それ、必須?」と言われたが、母や祖母の雑煮に入っているのはいちょう切りにせずともお椀に入る可愛い太さのこの大根で、どうしても外せなかった。梅や桜に型抜きしたかったが大きさが足りなかったので輪切りに。
金時人参:こちらは型抜きした。
・ぶり
・かしわ
三つ葉
・柚子


おせち・作るもの

 ■煮しめ

・こいも/金時人参ごぼう/れんこん/干し椎茸/きぬさや/うずらうずらは長女が食べると思って。あと実家では入れないがこれも長女が食べると思ってちくわも入れた。それと、実家では大根を入れるのだが私は形が崩れるのが嫌で今回はやめた。

■肉巻き
・牛肉/金時人参/三度豆/ごぼう:いい肉をたくさん巻くと美味しいということがわかった。母は肉をけちっていたな(笑)やってみて美味しかった味付けはしょうゆ:酒:みりん:砂糖を1:1:1:2

紅白なます
・かぶ/金時人参/柚子・昆布:母も祖母も、かぶとにんじんを千切りにせず輪切りにする。そしてにんじんを梅や桜の形に抜く。切り方なんてどうでもいいかもしれないが、そういうところが思い出しては懐かしい、再現したいと思うポイントだったりする。

■たたきごぼう:夫と話して、ごぼう煮しめにも入れるので不要との結論だったが、ごぼうがたくさんあったのでこっそり作った。

■黒豆
・黒豆:だいたい自分で買ったことがないので、200グラム1,000円くらいすることを知らなかった。最初は小粒の安いのを買おうとして、スーパーで母に電話して「そんな安いのじゃないで!」と言われて大粒のを買う。

■たつくり
・ごまめ/くるみ

■えび塩焼き
・有頭えび

■くわい煮もの 
・くわい:地元がくわいの産地なのと、正月にしか食べないので買おうと思っていたが、そんなに好きなものでもないので夫と話して入れないことにした。今年、芽が出なかったらどうしよう。 


おせち・買うだけのもの

■栗甘露煮:栗きんとんにしてもいいけれど、母と祖母と妹と話していて、ここ数年で「美味しいのは栗やんな。いもはいらんな」という結論に至ったので、いもは無しで市販の甘露煮を詰めるだけ。

■紅白かまぼこ:個人的にあまり好きではないが彩りとして。長女はぱくぱく食べたのであってよかった。
■かずのこ:個人的にあまり好きではないが夫は好きらしい。楽をして味付けを買ってきてパックを開けるだけ。
■ぼうだら:実家では煮てあるのを買ってきて詰めるだけだが、正月になると食べたくなる。
■たいのこ:これも煮てあるのを買ってきて詰めるだけだが、自宅近くのスーパーではどこも売っていなかった。地域性かな。

 

年が明けるのを「待つ」

晦日には家じゅうをピカピカに掃除して、さっさとおせちを詰めて、年越しそばを夕飯に食べたらこたつでみかん、というのが私の実家の過ごし方だったので、それを実現したかった。こたつは無いが。大掃除も平日の合間を縫って少しずつ進めていたのであとは玄関とベランダだけ、これは夫が最後にやってくれてとてもすっきり、感謝だった。なんというか、クライマックスに向けてわーっと準備をしつつもしんどくならないくらいの気持ちを保って、凛々しい気持ちで年が明けるのを「待つ」、この感じを味わうのが好きだ。まあ子どもと一緒に寝落ちしたけど、やることをやり終えた清々しさがあった。
30日に黒豆、紅白なます、たつくりを作り、大晦日煮しめ、肉巻き、たたきごぼうとちょっとずつ作って、昼過ぎにはお重に詰め終わった。たつくりを作って母に写真を送ったら、うちも今作った、と。段取りのいい母なので、こういうときにタイミングが合うとなんとも嬉しい。

年越しそばは、長女にはそばを食べさせたことが無かったのでうどんで。それと長女がにしんを食べるかわからなかったのでかき揚げを作った。かき揚げというと我が家では残り物で作るおかずのようになっているのであれだったが、夫も長女もたくさん食べてくれた。揚げたら何でも食べる長女だが、器用にごぼうを出していた。揚げたごぼう、いっちゃん美味しいくらいなのに、なぜ‥。細く長いものを食べるとね、とひととおり説明すると、「うん、わかった」と長女。そしてほとんど残す。3歳の正月はそんなものなのだな。おせちのごまめと黒豆をかなりつまみ食いしたし、仕方ないか。


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美味しい味と懐かしい味と

元日の朝。いつもは起き抜けから「パン食べようよ」と急かしてくる長女だが、こちらが雑煮の準備をするのを待っていてくれた。

母や祖母の雑煮は塩の味がはっきりするおすましにぶりとかしわを入れる。雑煮大根と金時人参を梅か桜に型抜きして、それが餅の上に綺麗に乗せられている。夫に「このぶりはそのまま入れたの?」と聞かれたので、「塩ふって霜降りして…」と答えたところで夫が言いたいことに気づいた。「塩味が足りないね」「うんうん」と。たしかに魚そのものの味という感じで、塩焼きのような塩っけは無い。でも記憶をたどってみると、母も祖母もこの味だ。夫に言われて初めて気づいた新鮮さと、懐かしさと。味覚や記憶は人それぞれだから、わかる!好き!ぴったり!みたいな感覚を味わうのはそうたやすいことではないのだろうなあとぼんやり思った。

義実家で初めて雑煮を食べさせてもらったときに感動したのは揚げた餅を入れるというもので、さくさく、じゅわじゅわしてめちゃくちゃ美味しい。今年はおせちもお雑煮も私の好みで作ったので、揚げ餅の雑煮が食べられないのは残念だろうと思って「餅を揚げよか」と聞いてみた。そうしたら「ううん、いいよ」と。でもそのあと夫は自分で揚げていた。それを見て、そうやそうや、と勝手にうなずいた。それが今の男性や、母ちゃんに作ってもらわなくても食べたいものは自分で作ったらいいんやと(そして夫は私よりも料理が上手です)。


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自分たちだけで迎えた正月はこんな感じで小さな宴だったけれど、とても豊かな時間だった。